u゛ノート
有線 LAN の相性問題

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 したがって、この文書は本来の目的を達成していません。 最終更新当時の世の中の様子を伝えるという、 本来とは異なる目的で公開を続けているものです。
 以上の点を理解のうえ、お読みください。

Summary

 実家の家庭内 LAN で起こった「相性問題」への対応をまとめた。 事情をよく知っている人にとっては読む価値のない内容だが、 ハマる人はハマりそうなので。
 結論から書くとこれが実に単純で、 有線ブロードネットワークスの設置したマンション用機器(おそらく HUB)と無線アクセスポイントの有線ポートとの相性が悪かったと思われるので、 速度を10Mbpsに落としたら解決したという、ただそれだけのことだ。


事の起こりは「有線」開通

 事の起こりは2003年8月末。 実家に有線ブロードネットワークスの「BROADGATE-01」(マンションタイプE) というサービスがやってきた。 ある程度以上の人数が集まると月3800円とそこそこ安いうえ、 現状の「ケーブルテレビインターネット」は(特に集合住宅では) 相当まじめなノイズ対策が必要で、 データ通信としてはやや不安定な一面を持っているので、 ケーブルテレビから乗りかえることにしたのだ。 グローバルIPアドレス(しかも固定!)を太っ腹に5個くれるというのも、 今のところ使い道はないものの便利でいい。
 ちなみに「タイプE」というのは、 マンションの「根元」に来た光ケーブルと各部屋をイーサネットで結ぶもので、 ほかに、根元と各部屋を VDSL(既存の電話線を利用)で結ぶ「タイプV」というのがある。
 工事は無事終了し、壁に 100BASE-TX の「コンセント」ができたというので、無線 LAN のアクセスポイント(ルータ機能つき)とコンセントを結べばおしまいで、 私がいなくてもすぐ使用開始…となるはずだった。
 ところが翌日、弟から意外なメールがやってきた。 「明らかに今までより遅い」というのだ。 当初は単に回線が細いだけではないかと思っていたのだが、 これまでのケーブルテレビインターネットも夜中はかなり遅く、 それより明らかに遅いというのは尋常ではない。 どうにも気になったので、青春18きっぷの使える最後の週末、 見に行くことにした。


回線速度チェック

 夜間作業明けなので仮眠をとりながら移動すること約9時間、ようやく実家に到着。 蒸し暑い部屋でさっそく作業を開始した。
 まず、回線が細くて遅いのか、それとも別の原因なのかを見極めるべく、 ちまたにあふれるスピードテストをやってみた。すると、無線 LAN 経由でも3Mbpsという数字が出た。ちなみにこれまでのケーブルテレビだと2Mbps弱。 また、壁のコンセントとPCを直結すると6Mbpsという数字も出て、 多人数で共用していることを考えると、そこそこ納得のいく数字が出た。 混雑する時間帯でなかったからにせよ、回線の速度は順当のようだ。
 別に問題ないじゃないか、と一時は思ったが、 しばらく使っていると弟のいう「遅さ」が何なのか分かってきた。Web ページを見ていると、HTML 文書本体を読み込みながら、 別の画像ファイルやら何やらを同時に読み込むことが多いが、 このようなとき、一部の画像ファイルがなかなか転送されてこないのだ。 転送が始まると一瞬で終わるので、 転送の要求を出したのにしばらくレスポンスがないのか、 あるいは転送の要求をどこかでいったんためてしまっているのか。 ともかく、何もしていない「空白の時間」が無視できないほどにあり、Web ブラウジングの体感速度はたしかに従来より劣る。
 この現象は無線 LAN を使わないで壁のコンセントとPCを直結すると出ないので、 どうやら原因は無線 LAN のアクセスポイントにありそうだ。メルコの WLAR-L11 というかなり古いアクセスポイントを使っているので、 思い当たるふしはいろいろある。


ルータの能力チェック

 まず考えたのは「ルーティング能力不足」だ。WLAR-L11 はルータの機能も持っていて、アドレス変換やら何やらをやるわけだが、 ねだんや製造時期から考えてそれほど能力が高いとは思えない。WAN 側からあまりに勢いよくデータがやってくるので、 処理しきれていないのではないか、と思ったのだ。
 幸い、有線ブロードネットワークスは複数のグローバルIPアドレスをくれるので、 WLAR-L11 を「ブリッジモード」で使ってみることにした。これだと WLAR-L11 はアドレス変換を行わず、受け取ったデータを相手に素通しするだけなので、 負荷は若干軽くなるはずだ。ただ、WLAR-L11 自身が1つIPアドレスを「消費」するので、最低でも ISP から2つIPアドレスをもらえないとこのモードは使えない。
 いい考えだと思ったこの手法だが、やってみると効果はなかった。Web ブラウジングしていると、やはり画像が一瞬遅れてやってくるのだ。


切り分けはできたが…

 これでようやく、WLAR-L11 の 100BASE-TX ポートと壁のコンセント(の先にある機器)の相性問題を疑うことになった。
 相性問題を解決するには、相性の悪い2機器を直接結ばないようにすればよい。 無線アクセスポイントを買い替えるという方法が1つあるが、 これは(お金がかかりすぎるので)現実的ではなく、 無線アクセスポイントとコンセントの間に1クッション置く、 という方法を考えることになる。
 この手の機器で一番安価なのは HUB だろうが、果たして HUB を間にかますだけで効果があるものだろうか。現在主流のスイッチング HUB ならば、HUB がデータの行き先を解釈してしかるべき処理をするので、物理的な接続は HUB 内でいったん切られるようなイメージがあり、 したがって相性問題を解決する可能性があるように思うのだが。実家に余っている HUB がなかったので、これは試せなかったのだが、 実験として一度やってみたかったところだ。時間があれば HUB を買ってこようと思ったのだが、今回はそこまでの時間がなく、ボツ。
 このあたりで疲れがピークに達したので、1日目の作業は終了。 「直らないならケーブルに戻せばいいじゃん」などと気軽に言う弟が恨めしい。 有線ブロードネットワークスに泣きついて調査させるというならともかく、 あっさり現状に逆戻りするなんて、意地でも回避したい。


学生時代の教訓

 2日目、朝食までの間に考えた。 そういえば大学院にいたころ、同じような相性問題で悩んだことがあったな、と。
 そのときはPC内蔵の NIC とスイッチング HUB(だと思う)の相性が悪かった。 まったく通信できないというわけではないが、 データの転送速度は明らかに異常な遅さだった。 PCを修理に出してみたものの症状は改善されず、 結局はPC側の設定でスピードを10Mbpsに固定してその場をしのいだ。
 この一件で「相性が悪ければ、 100Mbps対応の機器でもまず10Mbpsにしてみる」という教訓を得たわけだが、 今回はまさにこの教訓の当てはまる事例だ。


最新ファームウェアの意外な落とし穴

 しかし、ここで大問題。WLAR-L11 の設定はすべて Web ベースで行うのだが、「設定ページ」をいくら読んでも、100BASE-TX ポートの設定を変更できそうにないのだ。 ケーブルその他を取り替えて強制的に 10BASE-T に落とすという手はあるかもしれないが、モノがないので今すぐには無理だ。
 何か、隠しコマンドのようなもので設定をいじれないのだろうかと思い、Web で WLAR-L11 の取扱説明書をあらためて読んでみると、説明書には「100BASE-TX ポートの設定をいじる方法」のスクリーンショットが載っているではないか。 あれ? 変えられるの?
 WLAR-L11 に適用できる最新のファームウェアは、多くの機種に共通の「WLAR Series Broadband ファームウェア」というものなのだが、多機種に共通であるため、 各機器固有のハードウェアを使用・制御する能力は、実は劣っているのだ。 この前に帰省したときにはその点に気付かなかったので、 「新しいものを入れておけば安心」と思ってファームを更新したが、この時点で 100BASE-TX の設定をいじる機能が消失したのだ。


問題解決、報酬は朝夕4食

 これに気付けば、あとは早い。さっそくメルコの Web ページから「機種固有のファームで最新のもの」を取り寄せ、再書き換え。 書き換え後、 無線アクセスポイントにまったくアクセスできなくなってしまったのはあせったが (原因はPCに入っている無線 LAN カードのドライバが最新版でないのに、 AirStation ユーティリティだけ最新版だったので、無線 LAN 経由でアクセスポイントを検索する機能が使えなかったからだと思われる)、UTP CAT5 のリバースケーブルを非常用に持ってきていたので、 有線で接続して事なきを得た。
 あらためて Web ベースで設定を行ってみると、たしかに 100BASE-TX ポートの設定が可能になっている。 「10Mbpsか100Mbpsか」「半二重か全二重か」をそれぞれ手動設定できるので、 まずは10Mbps、半二重にしてやってみる(なぜかこれが初期値になっていた)。 すると問題はあっさり解決。 その後、10Mbpsで全二重にしてみたら、こちらも問題なし。 しかるに、100Mbpsに上げると半二重、 全二重ともにダメで、これで原因ははっきりした。
 ちなみに、これまで使っていたケーブルテレビのインターネット接続は、 ケーブルモデムが 10BASE-T にしか対応していなかったらしく、 強制的に10Mbpsになっていた(WLAR-L11 の「Ethernet」ランプの色で判断できる)。

 結果的には追加投資ゼロで不具合を解消できたわけだが、 この「ドラマ」を家族は知る由もなく、報酬といえば夕食と朝食、各2回分だけ。 ただ、母の「あんたが苦労するようじゃ、 ふつうの家庭では(同じことが起きたとき)どうするんだろうね」という言葉が、 妙に印象に残っている。



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最終更新: 2004年 3月 6日
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