節約の発想 近距離編 Part 4
路線バスを使いこなす

 一部の節を「折りたたむ」機構を試験的に導入しています。 詳細については「折りたたみ機構の試験導入について」をお読みください。

Index

  1. 総論:交通費を安くするには
  2. まず地図を見よ
  3. 交通費は「足で稼ぐ」
  4. 路線バスを使いこなす
  5. 鉄道各社の得意分野を知る

 交通費の節約を考えるとき、見逃せないのが路線バスです。 鉄道とくらべて「一見さん」に利用しにくい印象がありますが、 下調べをしておけば、初めての路線でも使いこなせます。


バスで節約? バスで浪費?

 「バスを活用して交通費を節約しよう」というのがこの章の主旨ですが、 バスは利用方法しだいで割安にも割高にもなります

得な例:鉄道2社をバス1本に  

 路線バスが交通費の節約に効果的なのは、 主に「鉄道なら1本で行けないところを、バスなら1本で行ける」という場面です。
 鉄道を2社乗り継ぐと、たいした距離でなくても300円程度はかかりますが、 都市部のバスはたいてい「どこまで乗っても200円程度」で、 バス1本で済むならバスのほうが安くつきます。 こういう場合にはたいてい、電車よりバスのほうが近道をしているもので、 運賃だけでなく所要時間の点でも有利ということがあります。

損な例:バスで5分、歩いて10分?  

 逆に、路線バスを使うと割高になることもあります。 典型的には、「バスに乗ると目的地のすぐ近くまで行けるので、 行程の最後でバスに数分間乗る」といった利用方法です。
 路線バスは短距離でも200円程度はかかるうえ、 10kmも20kmも乗り続けることはまれなので、 距離あたりの運賃で考えると決して安い乗り物ではありません。 「鉄道で目的地の近くまで行き、最後はバスに5分乗る」といった行程は最悪で、 バスに乗ろうとしている部分を歩いたり、 別の経路を考えたりしたほうがいいでしょう。 バスで5分なら、歩いてもたいした時間はかからないはずで、 地図を見て距離を測ってみるべきです。
 私の場合、距離が1.5km以内ならまちがいなく歩きます。 それ以上だと、荷物の多さや天候、バスの待ち時間なども勘案して決めます。

郊外のバスは要注意

 都心部のバスでは「いくら乗っても均一運賃」というのが一般的ですが、 郊外に出ると、整理券方式で距離によって運賃が変わってきます。
 この「距離に応じた運賃」は要注意です。 もともと、1kmあたりの運賃が鉄道より高めなので、 5分、10分と乗っただけで、ものすごい運賃になることがあります。


必携!バス共通カード

 首都圏でバスに乗るとき、ぜひ利用したいのが「バス共通カード」です。
 バス共通カードの最大のメリットは割引です。 一番安い1000円のカードでも1100円分使えますし、 一番高い5000円のカードなら実に5850円分も使えます。 割引率にすると約14.5%で、定価200円のバスに171円で乗れる計算になります。 有効期限はなく、何年かけて使い切ってもOKです。

まずは5000円、先行投資

 いくら安いからといって、ふだんバスにほとんど乗らない人が、 いきなり5000円を「先行投資」するのには抵抗があるかもしれません。
 が、団体行動など、何かの拍子に一気に消費する可能性があります。 2人以上で乗っても、1枚のカードで全員分の運賃を払えるので、 減るときは一気に減ります。
 また、首都圏の「バス共通カード」の通用範囲は非常に広く、 東京から50km圏内はほぼカバーされています。 それだけ消費するチャンスも多いといえます。
 そんなわけで、よほど資金繰りに困っていなければ(そして、 モノをなくしやすい人でなければ)5000円のカードをおすすめします。 この低金利時代、たかだか5000円を先払いしておくだけで大幅に割引になる、 というのは魅力です。使い切るのに5年かかるとしても、 金利は年3.4%です。

 私の場合、月に一度もバスに乗らないことが珍しくありませんが、 常に5000円のバスカードは持ち歩いています。 それを何年もかけて消費するわけですが、 たまに会社の同僚と出張でバスに乗ると、一気に2000円ぐらい使うことがあります。 同僚のぶんまで自分のバスカードで払ってしまい、あとで精算すればいいわけです。 また、都心から少し離れた場所では1人分のバス運賃が300円、 400円になることも珍しくなく、こうしたところでバスカードを使えば、 意外に早く消費するものです。

首都圏以外も要チェック  

 首都圏以外にもバスカードはあります。地域にもよりますが、 地域内の複数社のバスで共通利用できるカードが少なくありません。 自分の地域のバスカードぐらいは1枚持っておいて損はないでしょう。

 バス会社にはこのほかにも、「春休みは小学生運賃が50円」 「家族のだれかが定期券を持っていれば、同伴者の運賃が100円」など、 大胆な割引を行っていることがよくあります。 詳しくは別のページに書きますが、特に家族で乗る場合には見逃せないところです。

PASMO 登場で存亡の危機?

 このように使いでのある首都圏の「バス共通カード」ですが、 鉄道・バスの共通ICカード「PASMO」の登場で存亡の危機に立たされています。PASMO の普及状況によっては、 磁気カードである「バス共通カード」が廃止される可能性があるのです。
 PASMO にもバス共通カードに似た運賃割引はあり、 最大の割引率はバス共通カードと同じなのですが、 「最初に5000円払えば850円の割引が確定」という方式ではなく、 「1カ月間で5000円利用したら850円ぶんのオマケを進呈」という方式のため、 「何カ月、何年もかけて5000円のカードを使い切る」といった人は割引の対象から外れ、 大損です。購入・チャージ時のクレジットカードのポイントなど、 細かい点を無視すれば、PASMO がバス共通カードより得になることはほとんどありません。 (例外としては、都営バスの乗継割引(バス共通カードでは乗継割引なしだが、PASMO では乗継割引あり)があります。また、PASMO 利用時の「オマケ付与率」は会社ごとに決められるため、今後、 会社によってはバス共通カードより有利になることも考えられます。)
 自衛策は「実際にバス共通カードの販売停止が決まったら、 必要な分だけ買い込んでおく」ぐらいしかありませんが、 利用できるうちにせいぜい利用しておきましょう。


調べてみよう「コミュニティバス」

 最近、市町村が独自に「地域密着型路線バス」を走らせる例が増えています。 俗に「コミュニティバス」と呼ばれるもので、 既存の路線バスより小さな車両を使い、路地裏まで入り込んだり、 市役所や病院などの公共施設にこまめに立ち寄ったりして、 既存の路線バスがカバーできなかった部分をカバーしようとしています。
 こうしたコミュニティバスは、 既存の路線バスより運賃が安いことがあり、交通費節約には見逃せない存在です。 主に地域住民の足なので、 よそ者には用のないところをこまめに回る路線が多いのですが、 ちがう鉄道路線の2駅を結ぶなど、 ときには「一見さん」にも利用価値のある路線があります。 もちろん、鉄道の駅からちょっと離れた場所に行きたいときの気軽な足としても活用できます。
 本数は概して少なめですが、自治体の Web ページでたいてい調べがつくので、狙って乗ることもできます。

 たとえば、浦安市の「おさんぽバス」は、浦安駅と新浦安駅を結び、運賃は100円です。 両駅間には通常の路線バスも走っていますが、こちらの運賃は140円のようです。 「おさんぽバス」は通常の路線バスより遠回りをするので時間はかかりますが、 100円という運賃は魅力です。また、運転本数も20分間隔で、 一般の路線バス並みです。
 また別の例として、台東区の循環バス「めぐりん」は、 浅草、三ノ輪、鶯谷、入谷といった駅を巡回する「北めぐりん」と、 上野、新御徒町、浅草橋、蔵前、田原町などの駅を巡回する「南めぐりん」、 浅草、上野、根津、千駄木近辺を巡回する「東西めぐりん」があり、 いずれも運賃は100円(複数の路線を乗り継いでもトータルで100円)。 運転本数も15分に1本と便利です。 バスを使わなければどうしても「地下鉄+JR」になってしまうところが 「地下鉄+100円」もしくは「JR+100円」で済みます。


バスの路線・時刻、どう調べる?

 地元以外のバスを利用する際、困るのは路線や時刻がまるで分からないことです。 目的地近くにバス停があることは地図で分かるとしても、 そこへ行くバスがどこから出ているのか、本数はどうなのか、 前もって知るのは困難でした。…つい最近までは。
 しかし今はIT時代です。Web 上で何とかなる場合が増えています。 また、紙ベースの有用な情報源もいくつかあります。

「東京バス案内」とその仲間たち  

 まず、首都圏に関しては、都道府県内の大部分のバス路線を1つの Web サイトで検索できるサービスがあります。

 上記のサイトを利用すると、目的地の停留所名が分かっている場合、 そこへ至るバスがどこから出ているかが分かりますし、発車時刻も分かります。 また、「この駅とこの駅を結ぶバス路線はないか?」といったことも調べられます。 (都県によって機能が若干異なるので、できないこともあるかもしれません。)

初心者には使いにくい?

 ただ、これらのサイトは、慣れない人には使いにくい面があり、 さらなる改善を望みたいところです。
 たとえば、行き先が同じでも経由地が微妙にちがう系統や、 1日数本のマイナーな系統が全部「別々の、独立した系統」として扱われるため、 停留所名を入力するとおびただしい数の系統が表示され、 何が何だか分からなくなる、ということが少なくありません。
 また、「市役所」などというありふれたバス停名を入力した場合、 必然的に複数のバス停がヒットしますが、 「市役所前<神奈中>」「市役所前(ゴム前)<神奈中>」 「市役所入口<神奈中>」などと、 どれがどこの市なのか分からない回答が返ってきます(神奈川県の例)。

バス会社を特定できれば…  

 上記のサイトで「目的地へ行くバスを運行している会社」を特定できた場合、 そのバス会社の Web サイトを探してみるといいでしょう。 路線図やバス乗り場などの付加情報を得られるかもしれません。 また、「県内全部の時刻を調べられるサイト」のない地域では、 バス会社に当たりをつけて、各社の Web サイトを片っ端から当たっていくしかないでしょう。
 最近は、大手の会社を中心に、 自社の全路線・全バス停の時刻を検索できるようになってきています。 バスなので実際の運行時刻は道路状況に大きく左右され、 正確な時刻が分かっても役に立つかどうかというのは別問題なのですが、 それでも「1時間に1本」といった閑散路線を使いこなすには、 時刻を事前に調べられることが必須条件です。

路線図だけなら紙がいい  

 バスに関する情報源として、ほかに有力なのは、印刷されたバス路線図です。
 このうち、首都圏で最もメジャーだと思われるのは、 東京バス協会が発行している「東京都内乗合バス・ルートあんない」です。 約1000円と少々高いものの、 東京都内のすべてのバス路線が鉄道の路線ごとに整理されていて、 異なる鉄道路線の間をショートカットするバスを見つけるには便利です。 本数の多い主要なバス路線は改廃がそれほどあるわけではないので、 1冊買っておけば数年は利用できるでしょう。 時刻までは載っていませんが、紙の路線図で系統番号を調べられれば、Web で時刻を調べやすくなります。
 同じようなものは他地域にもあります。たとえば神奈川県では、 神奈川県バス協会編集「かながわのバスマップ」というものがあります。 1800円とかなり値が張るものの、1/25000の地図上にバス路線をプロットしてあるので、 単なる地図としても活用できます。

あなどれない、無料配布の路線図

 このほかに、それぞれのバス事業者が、 自社路線の路線図を印刷して配布していることがあります。
 おそらく首都圏で最も利用価値が高いのは、 東京都交通局が発行しているバス路線図「みんくるガイド」でしょう。 折り畳み式の大判の地図(東京23区)にバス路線がプロットされているもので、 地図としてもそこそこ有用。しかも、うれしいことに無料です。 定期的に発行されていて、バスの定期券売り場や都営地下鉄の駅などでもらえるほか、 送料を負担すれば郵送してもらえるようです。



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最終更新: 2007年12月 9日
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