運転免許騒動記
免許取得への道 Part 9
2002年10月30日:仮免許学科試験

 二俣川の試験場を初訪問。試験以上に興味深いのは、試験場という存在そのもの。


試験場への道

 10月30日。今日も夜間作業明けで二俣川に向かう。 が、今日は目的がちょっとちがう。仮免許の学科試験を受けるのだ。
 二俣川の試験場の場合、学科試験と技能試験は別々の日に受けねばならない。 ということは今日は学科試験だけで、かなり気楽だ。 昨日から模擬問題を5回ぐらい解いているが、 合格ラインの正答率9割を割り込むことはまずあり得ないと分かった。

 試験場への正確な経路は把握していなかったが、 だいたいの位置は分かっていたのでフィーリングで歩いていく。 道すがら目に付くのはやはり受験者向けの商売で、 写真撮影に始まって学科試験の直前講義、問題集の販売など。 あと「代書」という看板を出した事務所も多いのだが、 免許取得と何の関係があるのかは不明。
 坂を登り切ると、突き当たりに試験場のコースが見えてきた。 第一印象は「とにかく広い」。 ふだん走っているのは小学校のグラウンドより狭いぐらいのコースだが、 ここは国立競技場クラスの広さである。 道路も当然のように片側2車線で、信号機もある。まさに未知の世界だ。 この調子でクランクやS字の幅も2車線分ぐらいあるといいのだが。
 コースもさることながら、試験場の建物もかなりの規模であった。 どことなく暗いその雰囲気は大病院のよう。 午後の試験がこれから始まるので、この広さでもなかなかの盛況である。

 入ってすぐのところに看板があって、「普通仮免許を、 学科・技能試験ともに初めて受験する」場合には、まず総合案内に行けと書いてある。 すべきことが分かっている場合、必要な用紙を勝手にとっていって記入し、 証紙を貼れば済むと思うのだが、何せ初めてなので勝手が分からず、 用紙をもらう以外に何か別の手続きもあるのかと思い、長い行列に加わった。 ところが、順番が回ってくるとやっぱり用紙を渡されておしまい。 しかも受付のお姉ちゃんはデフォルトでため口である(この人に限らずみんなそう)。 そりゃ商売でないのは分かるけど、今どき区役所だってため口はないぞ。
 用紙を記入後、窓口で証紙を買う。3300円ナリ。 あいかわらずキャッシュレス生活なので、手持ちの金が足りないかと一瞬あせった。 いちおう横浜銀行のキャッシュコーナーは中にあるようだが、 私の手持ちのカードではどうしても手数料がかかってしまう。
 用紙を書き終わったところでちょうど放送が流れた。 受付開始だという。すると、窓口の前には突如として行列ができた。 ここで学科・技能の双方を受ける人は少数派なのでまだ救われているが、 それでもしばらく待たされた。
 順番が回ってくると、用紙、住民票とともに写真を回収された。 2枚持ってきて、1枚は用紙に貼付してしまったのだが、 もう1枚はあとで別の用紙に貼付できるよう、 小さなビニール袋に入れてステープラで用紙に止められた。
 そして、おもむろに視力検査である。 機械をのぞき込むという私の苦手なタイプだった。 最初はふだんのメガネでのぞいてみたが案の定見えづらかったので、 最終兵器、約−6.5ディオプトリを誇る「超近眼用メガネ」を取り出し、一瞬でパス。 うちの会社の基準では片目で1.0見えないとある種の業務につけず、 件のメガネはそれ用にチューンしてあるので、 両目で0.7見えればよいというここの適性検査は楽勝である。
 視力検査を終えると「集合場所」という名のフロアに通されたが、 全般にイスが不足気味で、私はなんとか座れたものの、途中から「イス難民」も発生。 ただ、視力検査を終えてからさっきの窓口のほうに戻ることは可能だし、 集合の案内は放送でも流れるので、 指定された集合場所にこだわる必要はないもよう。
 まず最初に、 圧倒的多数派である「自動車学校を卒業して1種免許の学科試験を受ける人」が試験場へ。 何ら特別な日ではない、単なる平日である今日、 決して狭くないフロアを埋め尽くさんばかりの受験者の数には驚くばかりである。 しかも、ここにいるのは当然、神奈川県在住者だけ。 ということは、全国ではこれの10倍ぐらいの人が今日新たに免許を手にする。 恐ろしい数である。これらの人間がみな、 気体の分子のごとく社会に散っていき、そして一定数が衝突事故を起こすのだ。 「不用不急の免許取得はやめましょう」と声を大にして言いたい。
 待つことしばし、ようやく「仮免許の学科試験を受ける人」が呼ばれた。 その数わずか10名足らず。驚いたことに、この数は2種免許の受験者よりも少ない。 2種免許なんて持っている人はごく少数だと思ったのだが、そうでもないようで。
 一列に並んで、向かった試験場は別の棟だった。 雨が降ったらどうするのかと思うような裏庭の小道を歩いていって教室に入る。 雰囲気は予備校のようだ。 ちょうど柱の陰の席になってしまい、黒板が見えず閉口した。
 そしていよいよ試験開始。 楽勝かと思ったら、一瞬悩む問題、ちょっとひねった問題があって困ったが、 それでも15分で解答してさっさと出てきた(試験時間の半分を過ぎたら途中退出可)。
 今日、ちょっと悩んだのは以下のような問題。

普通仮免許をとれば、練習のためなら原付を運転可能

 意外な盲点である。もちろん本免許なら運転可能なのだが、仮免許だとどうか?  たぶんダメだろう(原付に「仮免許練習中」なんて標示を見たことがない) と思って×にしてきたが、答え合わせをすると正解。 「交通の教則」によると、仮運転免許は「第一種免許を受けようとする者が、 練習などのために大型自動車や普通自動車を運転しようとする場合の免許」とある。 それに、よく考えたら原付には指導者を同乗させられないではないか!

原付でバス専用レーンを運転可能

 これは単純な覚え忘れで思わず×をつけてしまったが、 実際には原付、小特、軽車両は通行できる。 お得意の偏った思考で、小特がOKということだけ記憶していたのだが…

運転者が危険を感じてブレーキを踏み、 ブレーキが実際に効き始めてから車が停止するまでの距離を停止距離と呼ぶ

 これ、問題文の意味がしばらく分からなかった。 どこから起算して「停止するまで」なのか?  わざわざ「実際に」という言葉が入っているので、 「効き始め→停止」のことを言っているのか? だとすると「制動距離」である。 いや、しかし実際の行為の始まりはブレーキを踏むことだから 「ブレーキ踏み→停止」のことか?
 迷ったあげく、「危険を感じる」ことも重要なファクターであると思ったので、 「危険を感じる→停止」のことと理解して結局は○にしてきたが、 「交通の教則」を読むとほとんど同じような文章があって、どうも○でよさそう。 「交通の教則」の文章は明確なのだが、 それを若干縮めた件の試験問題にはあいまいさが潜んでいると思う。

免許を取って1年未満の人が普通乗用車を運転するときは若葉マークがいるが、 普通貨物車ならいらない

 根拠がなさそうなので×にしたが、たぶん×で正解。 でも、たしかに若葉マークのトラックってあんまり見ないから、少し不安にはなる。

 などなど、 さすがは「理解に苦しむ問題が多い」とその難度を絶賛されている学科試験、 一筋縄ではいかないということを十分に理解したことであるよ。 まぁ、でも明らかに正誤の分かる問題、 想定済みの引っかけ問題も多かったから、45点を下回ることはなさそうだな。

 試験を終えると、出がけに詰めこんできたハンバーガーのせいでのどが乾いていた。 しかし試験場内の自販機は紙コップタイプのものばかりで、いまいち飲む気がしない。 しかも、試験場全体に陰惨とした雰囲気が漂っている。 しかるに合格発表まではあと1時間半もある。
 ひとまず、一般的な自販機を求めて外に出て、駅のほうへ歩いていったら、 1台も見つからないまま、結局は教習所近くのサイゼリヤに行きついてしまった。 そこそこ空いていたので、禁断の「ドリンクバーだけ」で1時間以上粘ることにした。 189円でテーブルつきの座席が手に入り、飲み放題なら納得のおねだん。 これまでの「免許取得記」もだいぶまとまった。

 15時50分の発表に間に合うよう店を出て、試験場に着くとちょうど発表がある。LED の掲示板に番号がずらっと出る。自分の番号は…あった。 さすがに当然とは言わないが、まぁ順当だ。 しかし、番号はけっこう飛び飛びで、私の前に座っていた人も落ちたようす。 あの試験で落ちるというのも悲しいものがあるな。

 合格者は最初「○番窓口に並べ」と言われたのだが、その後すぐに列は崩され、 輪になって説明を聞く。これがなかなか長く、かつややこしい。
 説明の内容は「技能試験の受験日をどうするか」であった。 受験日ははじめ試験場から提示されるのだが、 さすがにそれでは都合の悪い人も多いだろうということで、 日時を変更するための方法が大きく分けて3つあった。

  1. 今日、この場で都合のいい日を指定してもらう。
  2. 指定された当日、都合の悪いときは勝手に試験を休み、 翌日以降に試験日の再指定を受ける。 電話でも来場でもいいが、電話での変更権は合格までの間に1回だけである。 また、来場して試験日の変更を行う場合は訪問時間がかなり限られている。
  3. 指定された当日、都合の悪いときは勝手に試験を休み、 翌日以降キャンセル待ちで受験する。当然、必ず受験できるとは限らない。

 どれも一長一短であるが、私思うに、一番有利なのは1である。 最近、普通仮免許の試験だと「至近の空きは10日後」という感じらしいので、 2の方法だと、再指定を受ける日(=当初の試験日の翌日以降) からさらに10日ぐらい待たされてしまう。どんどん受験の機会が遠のくのだ。 また、3の方法だと、 確実を期すには試験開始の2時間ぐらい前に来て台帳に名前を記入する必要があり、 時間的なロスが大きい。
 なお、どの方法を選択するにしても、 当初の指定日よりも前に試験日をずらすことはできない。 一刻も早く免許を取りたい人は、 向こうから提示された条件をおとなしく飲むのがよい。

 また、コースの決定方法や下見についても説明があった。 普通仮免の場合3コースがあるのだが、 試験の数時間前に「今日の試験で使わないコース」が1つ発表される。 つまり、3コースのうち2つに絞ることができる。 そのうえで試験開始前なり昼休みなりにコースの下見が可能で、 試験開始30分前に受験票で「2コースのうちどちらか」が判明するという。
 試験場がここまで「コースをあらかじめ知らせること」に気をつかっているというのには、 驚くとともに少し怒りを覚えた。 たしかに受験者にしてみればありがたい制度ではあるのだが、 試験場自ら「コースを覚えないと合格はおぼつかない」と認めているわけで、 「運転技術さえしっかりしていればコースを知らなくても合格は可能」 という正論は聞こえてこない。 言いかえると「合格するには受験専用のテクニックが必要」ということにならないか?  そんなことだったら、実態に合うようさっさと関係法令を改正してくれと言いたい。

 試験の説明が終わったのは16時半ごろだったか。 夜間作業明けだし、さすがに疲れた。駅までゆっくり歩いて相鉄で帰る。


本日の支出

受験料(普通仮免許) ‥‥‥‥‥ 3300

Part 9 小計 3300
これまでの合計 133400


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最終更新: 2003年 5月 3日
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